会長あいさつ
本協会の前身である「鹿児島県自然愛護協会」から会誌「自然愛護」が1975年から発行されました。
その頃は数編の調査報告が掲載される程度でした。それを引き継いで、「鹿児島県自然環境保全協会」が2008年に発足し、装い新たな会誌「Nature of Kagoshima」を発行することになりました。報告や論文は格段と向上し,内容も多岐に渡っています。本誌は、国際基準逐次刊行物番号(ISSN 1882-7551)を取得し、鹿児島県ばかりでなく県外の自然や自然保護に関する情報を国内はもちろんのこと、国外へも発信する会誌として発展しています。
鹿児島県は過去数万年間に大規模な火山活動を繰り返し、その度に動植物の衰退と繁栄が繰り返されてきました。本県は南北に連なる列島を含めて600 kmにおよび温帯から亜熱帯を包含しており、陸域では多様な動植物が育まれ、固有種も豊富です。海域では、黒潮の影響を受けながらサンゴ礁の発達や多様な魚介類が育まれています。この恵まれた自然とその魅力を再認識しながら、地道な調査研究が進められ、本誌がそれらの成果を発信する情報誌として発展することを願っています。
一方、地球温暖化や海水温の上昇で生物への影響が懸念されています。さらには、移入外来種の問題や、シカやイノシシの急増による農業被害で人との軋轢が生じていて、保護管理の必要性がますます高まっています。こうした問題にも関わるとともに、本会の活動が、地域社会の教育や文化の発展に寄与することを期待しています。
本会の活動は、事務局の取り組みや編集事務局の尽力に支えられています。今後の発展のために、ご理解とご賛同をいただくと同時に、積極的な投稿と忌憚のないご意見をお願いします。
2024年5月12日
鹿児島県自然環境保全協会
会長 船越公威
略歴
船越公威(ふなこし きみたけ)
鹿児島国際大学名誉教授/哺乳類学(農学博士)
1948年生まれ
九州大学農学研究科でコウモリ類の研究に専念した後、その適地にある鹿児島国際大学(当時鹿児島経済大学)に赴任し、その後も精力的に哺乳類に関する調査・研究を行っている。
現在、鹿児島国際大学名誉教授、鹿児島県希少種野生生物検討委員会委員、希少野生動植物種保存推進員、鹿児島県環境審議会鳥獣部会会長、鹿児島県外来種対策検討委員会委員、鹿児島県環境審議会委員として鹿児島県に関わっている。
著書として、『現代の哺乳類学』(分担執筆、1991年、朝倉書店)、『ヒトと自然』(分担執筆、2000年、東京教学社)、『冬眠する哺乳類』(分担執筆、2000年、東京大学出版会)、『コウモリのふしぎ』(分担執筆、2007年、技術評論社)、『日本の哺乳類学①小型哺乳類』(分担執筆、2008年、東京大学出版会)、『南西諸島の生物多様性、その成立と保全』(編集・分担執筆、2015年、南方新書)、『コウモリ学』(単著、2020年、東京大学出版会)、『識別図鑑日本のコウモリ』(分担執筆、2023年、文一総合出版)ほか多数。